伝統と技術で魅せる「美」の和食器|テーブルウェア・フェスティバル2019 レポート
引き続き、2/3(日)から9日間、東京ドームで開かれている「テーブルウェア・フェスティバル2019」の様子をお届けします。
前回のページで紹介した特集企画のほかにも、テーマ性を持ったブースが充実しています。「日本の器を訪ねて」では、7つの地域による貴重なパビリオンが展開されていました。
日本磁器の発祥、有田焼の“白”に惚れる
まずは、日本磁器の発祥とされる有田焼。薄くて真っ白な素材(白磁)を活かした洗練されたデザインの器が多く、400年以上続く伝統産業の実力を目の当たりにした気がしました。
素朴さを活かした可愛らしい“瀬戸もの”
日本六古窯の一つである瀬戸からも、器のほかにも可愛らしい装飾品が多数出展され、行きかう人々を楽しませていました。
近年では、和室がない、または限られたスペースになっているお宅も増えていると思います。そんな住空間にも、こうしたささやかな季節の装飾をあしらうと生活の豊かさが増しますね。
そのほか、会津(福島)や岐阜の美濃と多治見、とこなめ(愛知)、波佐見(長崎)といった産地から焼き物などの出展があり、どのブースも賑わいを見せていました。
探していた一品との出会いをもとめて|展示販売コーナー
展示販売コーナーには、所狭しと日本のメーカーが出展しています。
新幹線が開通し、東京や大阪とのアクセスが向上した北陸三県も大きくブースを展開。現地に足を運びたくなるような、価値ある伝統工芸品が並んでいます。
石川県(加賀)の金箔を使ったガラスには、目を奪われてしまいました。
漆塗りの専門店も多数出展!
漆塗りの専門店では、津軽塗を販売する「イシオカ工芸」さんに立ち寄りました。津軽塗は、「研ぎ出し、変わり塗り」という技法に特徴があるとのこと。幾重にも塗り重ねた漆を平滑に研ぎ出して、模様を出していくそうです。その手間といったら大変なもの。40回以上も漆を塗り重ねて、2か月半から3か月を費やしてやっと出来上がるということでした。
国内で生産される漆のうち、7割が東北の森から生産されています。その中でも、北限の青森でとれる漆は「堅牢」と評されているそうです。そのような青森の漆で作る津軽塗りは、劣化に強くて艶が失われにくいという特徴があります。この美しさが長年続いていくとは驚きです。
薩摩切子の発祥は、島津家27代目の島津斉興がガラスの製造を開始したことです。28代の島津斉彬が藩主に就任した時分に、色ガラスや薩摩切子の製造へと大きく発展しました。
しかし、斉彬の急逝により事業は縮小、1863年の薩英戦争では工場が消失してしまいます。ついに1877年ころ、薩摩切子の製造は途絶えてしまいました。
その後、島津家(島津興業)の復元事業により、約100年の時を経て再び鹿児島の地に蘇りました。一度は途絶えてしまった伝統を復活させようとした皆さんの想いを想像しただけで、熱いものがこみあげますね。
薩摩切子は、色被(き)せという工程で、下地となる透明なガラスに被せた色のついたガラスが分厚いのが特徴。削り方を調整することで、グラデーションや2色の表出ができるのだそうです。また、ガラス製品で出すことが難しい「紫」や「黄」の色合いも鮮やかに出しています。繊細さと豪華さを兼ね備えた逸品という印象を受けました。
下に掲載した「銚釐(ちろり)」には、一目で魅了されてしまう美しさがあります。貴重な復元品で、ほとんど外に持ち出すことがないとのこと。普段は社員さんでも、ガラス張りのショーケース越しにしか見ることしかできないのだそう。
ちなみに、下地となるガラスを吹くだけでも大変な職人技だそうです。1日に30本の下地を吹いても、製品に使えるのは2本ほど。とくにシャンパングラスの吹き出しは難しく、100本とって1本使えるかどうかだということでした。
ブランドや製品の説明を聞かせていただいた最後に、「島津の薩摩切子は、一度は途絶えてしまった産業です。その価値を守りながらも、これから伝統を創り上げていく使命があると考えています」と、力強いコメントをいただきました。
編集後記|
このように、各ブランドのストーリーを聞くと、価値とは何かということが分かってきます。そうした逸品を購入をするということは、伝統と職人の技に敬意を払い、心からの喜びを表現することかもしれないと思いました。私も、1日でこんなにもたくさんの本物の作品に触れられ、有難い気持ちでいっぱいです。
「テーブルウェア・フェスティバル2019」の見どころは、これだけではありません。レポートは次回に続きます。
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