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Twitter『菅原ミサキ@浜松の農業ライター』

お花見やピクニックなど、イベントの多い春。森へ散策に出かけてみるのはいかがでしょう?溢れるマイナスイオンや樹のぬくもり。森はいつでも、私たちに癒しをくれる場所です。

実は、浜松市の約7割は森林です。まちなかから1時間ほど車を走らせば、森が広がる地区に差し掛かります。浜松市民にとって身近にある森ですが、実際に訪れる機会は少ないかもしれません。

天竜の森ってどんなところ?どんな楽しみ方ができるの?

今回、天竜の地できこりを営む前田剛志さんを尋ねて、天竜の森の魅力を聞きました。


いま、見直されている天竜の森

仕事に生活に慌ただしい日々を生きる私たちにとって、いま必要なのは“森の力”かもしれません。なぜなら、森には、人を癒す要素があるからです。樹木から発せられる「フィトンチッド」という成分には、自律神経を整えて癒す効果があります。また、草木の緑色は、心の乱れやストレスを鎮めてくれます。

日本で2番目に広い面積を持つ浜松市。南アルプスの南端部へと続く北部の天竜区は、森林の多いエリアとなっています。まちなかから車で約1時間というアクセスの良さも手伝って、近年、天竜の森の利用価値が増しているそうです。


たとえば......


1.FSC認証材の供給地として

2.企業研修の場として

3.休日をすごす場として


1.FSC認証材の供給地として

約9万haの森林が広がる天竜区の一帯では、広大な森林面積を活かして林業が営まれてきました。近年では、森林にFSC(※)の認証を受けようとする取り組みが進み、国内で有数のFSC認証材の生産地となっています。

(※)FSC|「Forest Stewardship Council®/森林管理協議会」の略。持続可能な木材の生産や、流通・加工のプロセスを認証する非営利の機関。FSCより認証を受けた森林で生産刺される木材は、①森林の環境保全に配慮し②地域社会の利益にかない③経済的にも継続可能な形で生産される、という基準を満たします。


天竜地区のスギやヒノキの生産地は「天竜美林」と呼ばれ、日本三大美林に数えられてきました。とくに柔らかく色が良いとして「天竜杉」のブランドが付いたスギは、高い評価を受けてきた国産材のひとつです。

近年、天竜美林を中心に持続可能な森林管理を広げるべく、FSCによる森林の第三者認証を取得する動きがあります。浜松市の全体で128,693㎡ある木材の生産量(2017年度、静岡県統計要覧)のうち、80,143㎡でFSCの認証が取得されました。FSC認証材は、行政機関の施設一部や市内の金融機関・飲食店舗などで使用されているほか、東京オリンピック・パラリンピックの関連施設での利用も進められています。


▼FSC森林認証 主な活動経過 2018年8月浜松市HPよりhttps://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/ringyou/portal/ringyou/fsc/index.html


2.企業研修の場として

企業研修を森で行おうと考える企業が増えているそうです。静かな森は、自分と向き合い眠っていた感覚を呼び起こすのに最適な空間です。穏やかな時間を過ごすことで、仲間同士の絆が深まったり、良いアイデアも生まれたりするそう。天竜の森にも、企業研修のために東京などの都会から来る方がいるそうです。


3.休日をすごす場として

天竜の森への入り口には、二俣という交流地点にあたる町があります。国指定の遺跡でもある二俣城の城下町として栄えました。その中心地に「山の舎」というカフェがあります。ここは、地元出身の若きオーナーが営むお店。美味しいコーヒーと軽食を通じてコミュニティが生まれる場となっています。

この山の舎を中心に、人や自然とのふれあいを求める人々がつながり始めているそうです。山で行うYOGAや焚火を囲んで語り合う会など、さまざまなイベントも開催されています。山の舎では旅行業を立ち上げ、アウトドアや天竜の人々の魅力に触れるプロジェクトも計画中とのこと。休日をゆっくり過ごすのに、とっておきのエリアになりつつあります。


天竜の森には差し迫った課題も

豊かな自然と人のつながりに触れられる天竜エリア。その森には、知られざる課題もあると言います。

それは、天竜の森林に植わっている樹の約9割がスギやヒノキだということ。在来樹もありながら、木材として売る目的で人工的に植えられたものも多いそうです。これまでは伝統的にきこりが間引きや伐採をすることで、適切に管理されてきました。

しかし近年、外国産の安い木材に押されて国産材が売れなくなったことで、管理をしきれない人工林が増えました。放置された人工林は、山の生態系(バランス)を変え、土壌を弱体化させて土砂災害を引き起こす原因となります。また、育ちすぎたスギとヒノキは、花粉症の原因にもなってしまいました。


「花粉症を引き起こすからといって、スギやヒノキを敵対視するのは寂しい気がします。木々が花粉を飛ばすのは、子孫を残すため。花粉が過剰になるのは、生命の危機を感じているからなんです。同じ種類の木が密着しているので、スギやヒノキが『自分は子孫を残せるかな?』と不安になっているんです」と、前田さんは森の現状を教えてくれました。


「美しい森の未来に貢献したい」前田さんはそんな思いで千葉県から移住しました。現在、天竜できこりを営むかたわら、山や森の現状を伝える講演活動を行っています。

きこりになろうと思ったきかっけは、日本の自然の素晴らしさに気づいたこと。国立公園に指定される尾瀬を訪れた際、その水の透明度に感動したといいます。その後、世界中を旅したときには、日本の自然の豊かさを改めて痛感したそうです。

「100年後に日本に生まれる子どもたちのために、みんなが好きになるような森をつくろう」と決意し、天竜に移住。きこりの先輩たちに弟子入りをして林業を学びました。

天竜の森の現状を伝えるべく、浜松のまちなかや学校での講演も続けてきた前田さん。その活動は、方々から注目を集めるようになり、天竜の森林や木材の新たな価値を生み出しています。


▼TEDxHamamatsuでの講演「山と街をつなぐ顔の見えるきこり」より


前田さんに教わる天竜の森の魅力とは?

山の上からは、浜松のシンボル「アクトタワー」を中心とする街並みが一望でき、晴れた日には富士山もくっきり見えます。静けさの中に、草木の揺れる音や鳥の鳴き声が響いていました。まちなかから車で1時間のところに、こんな素晴らしい場所があるのですね。


次に、前田さんは、念願かなって購入したという山の一画を案内してくれました。敷地の半分ほどが、生態系豊かな天然の森として残っています。森を散策しながら、自生している樹々について前田さんが教えてくれました。


そこかしこに切られて置かれたままの木が。じつは、買い手が決まっている“商品”だそうです。色合いや質感にそれぞれの特徴があり、インテリアやアートの材料として利用されていくとのこと。


写真の中央は、この山のシンボルのクロモジです。昔は民家の庭先に植えられ、枝を折ってつまようじにしていました。香料としても化粧品や石鹸などに使われ、輸出もされたそうです。


こちらは、在来品種のお茶の花です。150cm以上の高さがあり、まだまだ成長している途中でした。お茶の木は本来、2mほどまで伸びる樹木なのだそうです。茶畑で見る茶樹は、40㎝ほどの背丈がほとんどですね。それは、管理や収穫のしやすさを考えて剪定されているためだそうです。


なんと、天然のユズまで。さわやかな良い香りです。ユズの木にはバラよりもずっと鋭くて固い棘があります。私が収穫に苦労しているのを見かねて、前田さんが採ってプレゼントしてくれました(笑)。


伐採された幹の切れ端からは、「樹が飲んでいたお水」があふれ出していました。樹々の息遣いが感じられますね。前田さんも樹の伐採のために山に入るときは、「樹の命をいただく」という神聖な気持ちになるそうです。天竜には、昔から続く“山の神様に感謝をするお祭り”もあるとのことでした。



実際に森を歩きながらお話を聞くことで、人と自然のつながりを感じることができました。「生かされている」ことを知り、自分のエゴもすっと消えていくようです。


ちなみに、ひとつの苗木が植えられてから成長し、木材として使えるようになるまでは100年かかるといいます。家づくりの材料を自然に頼っていた昔の家は、100年もつように設計されていたほどです。そのように、人はずっと、自然と共存して生きてきました。そこから、「安くて売れる木材を効率的に生産しよう」という考えが大きくなったのはつい最近のこと。気候の変動や災害の多発などは、「その在り方は間違っているよ」という自然からのメッセージかもしれません。


編集後記|

自然豊かな天竜区には新たな動きが生まれ、ますます面白く気軽に立ち寄れるエリアになりつつあります。暖かくなってきたこの季節。人のつながりやイベントをつたって、ぜひ訪れてみてください。

「家庭でも気軽に、森の魅力に触れたい」そんなときは、前田さんプロデュースのクロモジ茶で一息ついてみてはいかがでしょう?

収穫前のたわわに実った稲穂と言えば、秋にきらめく黄金色の風景が思い浮かびます。ですが、浜松には、7月に稲刈りが始まる田んぼがあるのです。通常の2ヶ月以上も早い収穫。そんな稲作を行うのは、水耕栽培で有名な 京丸園株式会社(本社:浜松市南区)の取締役 鈴木 啓之さんです。

なぜ、そのような早い時期にお米の収穫をするのでしょうか?そこには、家族や農業に対する深い想いがありました。鈴木さんの娘さんである露木里江子さんとご一緒に、お話を聞かせていただきました。


鈴木 啓之 さん|プロフィール

水耕栽培を行う農業生産法人、京丸園株式会社(2004年に長男の厚志さんが代表取締役として法人化)の取締役。400年近く続く農家(現:京丸園)に生まれ育ち、1955年より生産に携わっている。『姫みつば』『姫ちんげん』などのオリジナル商品を生産、全国40市場に周年で出荷する。1997年から障がい者雇用をはじめ、ユニバーサル農園として多くの障がい者を雇用している。現在は"土耕部"にて米、海老芋、根菜類の栽培を担当している。

露木 里江子 さん|プロフィール

鈴木さんの娘さん。静岡大学農学部卒業。卒業後、環境アセスメントの関連企業へ就職する。結婚を機に退職し、4児の母となる。2011年、末っ子の成長を機に小学生対象の学習塾「はてなくらぶ」を自宅にて開講。子ども会やPTAの役員も通じて、地域の子供たちの成長を見守ってきた。2018年4月にaiearth.を設立。魚の養殖と水耕栽培を掛けあわせた農法システム「aiearth式アクアポニックス」を提供する。社名は、末っ子の「愛」さんの名前から。

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元気は健康から。孫のために安心安全なお米を

菅原:水耕栽培やユニバーサル農業を、浜松エリアでいち早く取り入れてこられた京丸園さん。今日は、お話を伺えるのを楽しみにしていました。よろしくお願いします。

鈴木さん、露木さん:よろしくお願いします。

菅原:レストラン向けのミニ野菜が有名な京丸園では、稲作もしていたんですね。しかも、そのお米の収穫が7月という、通常の2ヶ月も早い時期に始まると聞きました。

鈴木さん:どうしてそんなに早く作るんだって、友人からも質問が来るんです(笑)。それはね、食欲の落ちる時期にパワーのある新米を食べて、夏を乗り切りたいからなんです。稲の生命力ってとても強いのね。1粒の種から派生して、1万粒以上もお米が獲れます。それくらいエネルギーがある作物なんだよ。

菅原:稲の種が発芽するためには、ある一定の温度が積算されることが必要です。田植えをするときに、その積算は間に合いますか?

鈴木:それはね、ちょっと工夫すれば到達しますよ。農協さんや農林事務所(※1)さんより、いろいろなご指導をいただきましたね。今まで60数年間と米作りをやってきて、きちんと工夫をすると目標どおりにできるんですよ。

菅原:キャリアが60数年…?失礼ですが、鈴木さん、おいくつになられるんですか?

鈴木さん:僕は、今年で82歳になります。

菅原:えー、とても見えません!

鈴木さん:兄弟が3人いる中で、長男の僕が一番元気で健康です。僕自身が作るお米を食べ続けてるからだと思います。自分の子供も3人いて、さらに孫が8人いて。子どもや孫にも、小さいころから僕のお米を食べさせています。

露木さん:孫のためにと、合鴨農法(※2)も取り入れたんですよ。健康と食の間には、強い繋がりがありますからね。

鈴木さん:今から25年ほど前に始めましてね。安心して食べられるお米を作りたいなと思いました。

菅原:愛情がこもったお米ですね。

鈴木さん:先月、餅つきを催した日に、孫が8人全員揃いました。「みんな頑張ってるよー!」と元気に報告してくれて。「頑張れるのは、じいじ(鈴木さん)のお米を食べたおかげでしょう?」と言ったら、みんな笑っていましたけれど。

露木さん:自分から言うんだね(笑)。

鈴木さん:僕は、病虫も寄せ付けないほど元気な稲を作る。そんな健康なお米を食べた方が、人間も健康でいられるんじゃないかなって思ってます。振り返ってみると、25年間やってきて悪くはなかったなと思います。

露木さん:虫は来なくても、すずめの大群は来るけどね(笑)。

(※1)農林事務所|「農業振興・農業普及・農地整備」などの農業や「森林・治山」といった林業の分野にわたって、さまざまな業務を行っている県の現地機関のこと。

(※2)合鴨農法|稲作において本来農薬を用いて行う殺虫・除草作業を、田んぼでアイガモを飼うことによって行う農法。アイガモは雑食性なので、水田中の害虫を好んで食べる。減農薬もしくは無農薬で稲作が実施できると期待されている。


鈴木家の豪快な!?子どもの自主性を育てる教育方針

菅原:愛情たっぷりのお米を食べて育った露木さん。鈴木さんの教育方針も愛情たっぷりだったのでは?

露木さん:私の学生時代とは、女性は高校を卒業したら就職するか、進学しても短大というのが普通でした。お父さんの意見で進路を決める人も多くて。そんな中、父は、4年制大学へ進学したかった私の気持ちを止めなかったですね。

鈴木さん:娘は、高校では生物クラブに所属していてね。酵母菌の研究をしていたんです。研究が全国大会で入賞して、昭和天皇にもお会いしたこともありました。そのとき、「そうか。娘は、頑張ったんだな」と思ってね。

露木さん:自然界の酵母菌を集めてきては、分析していました。この酵母は香りが良いとか、お酒を造るのに適しているとか。研究に熱中しては、夜中も学校に泊まり込んで試験管を振る日々もありましたね。

菅原:露木さんの一生懸命な姿に、鈴木さんも応援したくなったのですね。鈴木さんは、お子さんの自主性を大切にされているような印象を受けました。

露木さん:豪快な人ですよ。例えば、りんごを箱買いしてきて、「自分で皮をむいて食べなさい」と包丁を子どもに渡すんです。小学生のころには「リンゴ剥きの里江子」と呼ばれるくらい、包丁遣いがかなり上手でしたよ。ひどいでしょう(笑)。

菅原:露木さんも4人のお子さんを持つお母さんですね。子育てで大切にしていることは何でしょうか?

露木さん:子どもたちが、やりたいと言ったことはやらせてあげたかな。とりあえず幼稚園のうちは2年間、スイミングスクールに通わせました。もし水が怖いと、生命に関わることもあると考えて。それから、もしかしたら子どもたちの楽しみになるかもしれないと、音楽教室にも2年間。そこからは、それぞれにバレエや書道、あるいはサッカーなどやりたいことを見つけていきました。

菅原:お子さんの皆さんが、海外や国立の有名大学に通われています。

露木さん:少なくとも、勉強をしなさいと言ったことはないんですよ。塾もね、通っても良いけれど費用は建て替えなんです。将来返していただく約束です。

子どもたちの溢れる個性は、尊重してきました。文系に進みたいと言っていたのに、受験勉強中に「やっぱり理系に行きたい」と言った子もいます。中国で書道を学びたいと言い出す子もいて。みんな、個性がありすぎますね(笑)。

菅原:鈴木家の自主性を育む教育方針が、受け継がれているのですね。


農業への想いと、これからと

菅原:京丸園では、地域に先駆けてさまざまな取り組みを行ってきました。農業に懸ける想いをお聞かせください。

露木さん:お米の栽培に関しては、生き物を殺す性質のものは田んぼに入れないということです。

鈴木さん:良い微生物にとって居心地が良い環境をお世話するのが農業です。もしも、病気が出たら原因を考えること。すると、解決の策に辿り着きます。

菅原:具体的にどういったことですか?

鈴木さん:お米を取り巻く良い微生物が、体の全体を廻って人の健康を作るんですね。そこには、悪い菌もいて良いんです。悪い菌は、動かないように隅っこでじっとさせれば。それを、農薬で消毒すれば良い菌も一緒に死んでしまいます。

例えば学校でも、良い衆が幅をきかせれば良いクラスになる。でも、悪い子も、いざとなると良い働きをするんですよ。

露木さん:「田んぼは、学校のクラスと一緒」か。面白いね、お父さん!

鈴木さん:日本の高い湿度では、ウイルスが発生しやすいなど、全面的なオーガニックの実現は難しいところがあります。でも、うまく対処することはできると思っています。

露木さん:いつでも勉強だよね。

菅原:鈴木さんにお話を伺うと、農業や日々を楽しんでいらっしゃるのが伝わります。

鈴木さん:3人の子どもも立派になりました。今では、僕もやりたいことをやっていますよ。

露木さん:早期栽培のお米を作るのもそうだよね。

鈴木さん:お米を収穫した後の田んぼには、ゴボウの種も蒔いて、二毛作にチャレンジしようとしています。

菅原:そんなバイタリティ溢れる鈴木さんが、今、一番やりたいのは何ですか?

鈴木さん:焼き芋です。

菅原:えっ(笑)?

露木さん:本当にはまっていて、先日、数十万円もするような焼き芋機を買ってきたんですよ!驚きましたが、父が作った焼き芋を食べたら、これがとても美味しくって。焼いた芋から、蜜が噴き出すんです。

菅原:どうして、そのようなおいしい作物ができるんでしょう。

鈴木さん:先代が残してくれた土地があるお陰ですよ。先代が頑張ってくれたので、私も農業を継ぐことができたんです。

孫もみんな頑張っているのでね。一番下の大学1年生の子が、社会人になるまで自分も頑張ろうと思っています。


編集後記|

鈴木さん、露木さんの親子の絆や、農業への愛情を感じる素敵なインタビューでした。京丸園では、小・中学生や、障がいを持つ方とそのご家族を対象とした農園見学や、大人を対象とした視察の日を設けています。詳細は、こちらをご覧ください。

浜松市の隣りに位置する磐田市は、Jリーグのサッカーチーム“ジュビロ磐田”のホームグラウンド。大手企業の工場も多く、JR磐田駅前にはビジネスホテルが立地しています。

そんなJR磐田駅から車で5分のところに、「BARN VILLAGE(バーンビレッジ)」があります。ここは、カリフォルニアの商業区域をモデルにした、まさに“ビレッジ”な集合店舗。

2018年5月、施設内にオープンしたカフェ「BARN TABLE(バーンテーブル)」で、くつろぎのひとときを過ごしてきました。


開放感が漂う、スタイリッシュな空間

店内は、「BARN=車庫」の意味のとおり、オープンな空間となっています。30年以上の歴史があるBARN VILLAGE内の施設をリニューアルしているそう。

白を基調とした店内にはやわらかな陽の光が差し込み、読書におしゃべりにと、ゆったりくつろげるスペースです。

窓を開ければ、今にも、カリフォルニアの風を感じられそうですね。


体にやさしい丁寧なミール

地元の食材にこだわったミール(食事)は、ヘルシーながらボリュームたっぷり。廣岡シェフ手作りの、美味しさと食べるよろこびを感じられるメニューとなっています。

この日は、浜松市の「ラトリエ・テンポ(浜松市中区)」さんの自家製天然酵母パンを使った、“サバのバインミーランチ”をチョイス。

コーヒーには、スペシャルティコーヒー専門店「豆吉庵(磐田市国府台)」さんの、香りと味わい豊かな自家製焙煎珈琲豆を使用しています。

普段とは違った非日常感を与えてくれる「BARN TABLE(バーンテーブル)」、1度足を運んでみてはいかがでしょうか。


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BARN TABLE(バーンテーブル)

営業時間:11:00 ~ 20:00(L.O)19:30

定休日:火曜日

公式URL: http://barntable.jp/

所在地:静岡県磐田市今之浦2丁目8-2(BARN VILLAGE内)

農業を通じて農地は適切に管理され、雑草や病害虫の発生を抑制し、野生動物の棲み家と人家は区分されてきました。くらしの安全のためにも欠かせない農地の保全ですが、農業の担い手不足にともない対応が難しくなっています。


そんな中、静岡県では「ふじのくに美農里(みのり)プロジェクト」を発足。国からの交付金を充てて、農地の保全と質の向上に取り組む地域活動を支援する取り組みです。2018年度は、232の地域が認定を受けて活動をしています。


本プロジェクトの特徴は、「地域や生産者ぐるみで、農業の持つ多面的な機能の発揮」が期待されていること。磐田市岩田地区で2011年から活動を続ける「岩田故郷(いわた ふるさと)の会」を訪れ、独自の活動内容やビジョンを聞きました。

資料)多目的機能支払交付金のあらまし


地域の農地をまもる「岩田故郷の会」の活動

▲育成が5年目になるオリーブの木

菅原:今日は、「岩田故郷の会」で会計や広報を担当している青島保一さんに、会の取り組みをお聞きします。よろしくお願いします。

青島:よろしくお願いします。

菅原:最初に、青島さんの自己紹介をお願いします。

青島:生まれも育ちも磐田市岩田です。大学卒業後は、音楽好きが高じてピアノ関係の会社に就職しました。シンセサイザーが世に登場したことで、プログラミングの魅力にはまります。そこからプログラマーに転身し、SEとして企画からすべてできるようになりました。

現在は退職し、「岩田故郷の会」で、得意なパソコン周りのことから事務・会計作業まで担当しています。また、音楽を通じた交流が好きで、地域のお年寄りの交流サロンでも演奏ボランティアをしています。

菅原:「岩田故郷の会」に携わったきっかけは何ですか?

青島:地区の自治会長をしていたときに、磐田市から依頼があったのです。「ふじのくに美農里プロジェクト」に則した取り組みを、岩田でもしないかということでした。

菅原:「岩田故郷の会」の概要を教えてください。

青島:我々は、「ふじのくに美農里プロジェクト」に取り組んでいるメンバー15名の組織です。2011年に始動して以来、岩田交流センターや岩田小学校を中心として岩田地区で活動を続けています。

菅原:どのような活動をしているのですか?

青島:大きく分けて2つです。1つは農地の維持。農地や路肩の草刈りと農地に付随する施設の保守管理です。具体的には、水路の泥上げや陥没した箇所の補修、それからパイプラインの管理といったことが含まれます。

もう1つは、“多面的な”取り組みです。これが本プロジェクトのポイントで、各地域に応じた取り組みが推奨されているんです。我々は、さまざまな花きの植栽を通じて、景観を向上し地域のみなさんに楽しんでいただくことをしています。

菅原:会の発足から7年、どのように発展してきたのでしょうか?

青島:はじめのころは、農地維持のための草刈りがメインの活動でした。続けていくうちに、草刈りのほかにも、地域のみなさんが楽しめることはないかと考えるようになりました。

「菜の花を植えてみようか。コスモスやひまわりも良いね」と話し合って、花を植えてみることにしました。それから野菜に穀類、果樹と栽培品目を増えていきました。熊本から取り寄せたオリーブも植えましてね。実も収穫できるようになりましたよ。

菅原:さまざまなイベントも通年開催していますよね。

青島:はい、ちょうど今日は、「オリーブ祭」を開催して20人ほどお集まりいただきました。オリーブの実の塩漬けや葉っぱでお茶を作りました。オリーブは、しばらく収穫時期が続くので、ほかにも搾油や草木染のイベントを開いていきます。

それから、採れた小麦でピザやうどんを作ったり、ジャガイモやサツマイモの定植や収穫などもイベントにしています。


地域の子どもたちの笑顔のために

▲オリーブの塩漬けとレシピ

菅原:イベント開催の背景には、どのような想いがあるのでしょうか?

青島:地域の子どもたちに農業を体験してもらいたいという想いが、根底にあります。子どものうちから、このような農業体験や自然、土や虫に触れて、少しでも視野を広げてもらいたいと。将来、子ども達が農業に取り組む可能性もゼロではないと思います。

菅原:その一環で、岩田小学校とも交流を始めたのですか?

青島:はい、小学校の隣に使われていない畑がありました。そちらの地主さんが、「子どもたちが来られる場所にしたい」という想いをお持ちで。荒れ地だったのを整備して、花や作物を育ててきました。

菅原:イベントのアイデアはどのように出しているのでしょう?

青島:基本的には、私や組織のメンバーが考案しています。たくさんの子どもたちに来てもらうために、「子どもはもちろん、お母さん方も一緒に楽しめる」という視点で考えています。活動や楽しみを、地域のみなさんと一緒に共有できたらいいですね。

菅原:岩田故郷の会のイベントは、“おいしくて楽しいもの”が多いですよね。

青島:穀物も作っていますからね。今年は、小麦が240Kg収穫できました。7月にうどんを100食作って、地域の子どもたちに無料で食べてもらいました。

そばも、種まきから収穫、調理までみなさんと行っています。おそばで食べたりそば粉のピザにしたり、さまざまに楽しんでます。

菅原:特に女性に喜ばれているのは、どのようなイベントですか?

青島:ラベンダーでフローラルウォーターを作るワークショップなど、花を使ったものでしょうか。中でも、一番人気は、紅花の草木染めですね。鮮やかなピンク色が出るので、喜んでもらえるようです。

菅原:農作物の育成やものづくりに関しては、どう習得しているのですか?

青島:基本は、「手作り」「試行錯誤」です。例えば、こちらのラベンダーのエキス抽出器も、寸胴にパイプを溶接して作りました。洗濯ネットやホースなど生活用品も活用して工夫しています。さまざまな経験をしてきたメンバーの知恵を絞っています。また、交流センターの職員さんに指導をお願いすることもあります。

菅原:まさに、地域一体となった活動なのですね。

▲手作りされたラベンダーエキスの抽出器


岩田が、より魅力ある地域であるように

▲もうじき見ごろを迎えるコスモスの畑

菅原:会の運営において、ご苦労もありますか?

青島:そうですね、事務や会計の処理でしょうか。今は、私が一人で担っています。交付金の使用については、国の会計検査院の監査対象になっていて管理が厳しいんですね。公金ですから、会計が間違うことや不適切な用途に使うことがあってはいませんよね。

菅原:裏方では、大変なことも多いのですね。

青島:大変さもありますが、子どもたちに色々経験してもらえることの方が大切だと思っています。そのためにも、メンバーである自分たちが楽しむことが一番大事ですよね。農作業を楽しく行う、すると、イベントに来てくれる人も一緒に楽しめるという循環を作ること。農地維持というプロジェクトの趣旨も、発展していけばそこに行きつくと思うんですね。

菅原:活動が、地域活性にも繋がりますね。

青島:地域が盛り上がるというのは、本プロジェクトの成功にも非常に大切なことです。地域の方に楽しく喜んでもらえるイベントを意識しているのは、そのためです。組織のメンバーにとっても、憩いの場となっている側面もあります。そういった効果もあり、多目的な活動が大切にされているのです。

菅原:今後、この活動を中心に、岩田がどんな地域になったら良いですか?

青島:農作業を通じて地域づくりに取り組む方が、少しでも増えてくれたら嬉しいです。周りを動かすためには、自分たちがまずやってみてその姿勢を示すこと。「まずはやってみよう」が、私たちのモットーです。

菅原:素晴らしい取り組みが広く伝わると良いですね。

青島:会の活動を知ってもらうことから出発しようと、去年の2月からFacebookを通じた情報発信も始めました。本会やイベントに関心を持って、ここへお越しいただく方もいらっしゃいます。まずは、そうした意識付けからと思い、活動の発信を続けています。

菅原:触発されたときに、誰でも参加できるイベントはありますか?

青島:11月4日に収穫した小麦でピザを焼いて食べる「ピザ祭」、11月18日には、オリーブを手で揉んでオリーブオイルを抽出する「続オリーブ祭」を開催します。遠方の方でもどなたもご参加いただけますので、お問い合わせをいただけたらと思います。

青島さんのFacebookには、農園の植物の生育状況とイベントの開催の様子が毎日アップされ、フォロワーの方の楽しみとなっている。

▼お問い合わせ先

青島さん Facebook https://www.facebook.com/aoshimakry

編集後記|

地域の人々の暮らしを守るために必要な、農地の保全や維持の活動。岩田では、そこに暮らす人々が、楽しみながら継続して行っていました。

岩田地区の方はもちろん、地域コミュニティや自治のヒントが得たい方など、イベント情報をチェックして出かけてみてはいかがでしょうか?