【ゲスト参加】静岡県主催「第8回 ふじのくにに住みかえるセミナー」

2月2日(土)、静岡県が主催する「第8回 ふじのくにに住みかえるセミナー」が東京都有楽町で開催されました。運営を担うのは、NPO法人ふるさと回帰支援センター(以下:回帰センター)。全国45の道県(※東京都・大阪府を除く)と連携して、地方くらしやIJUターン、地域との交流を深めるサポート機関です。

JR有楽町駅から徒歩1分の東京交通会館8階に窓口があり、個別で移住の相談ができるほか、セミナーや相談会もたくさん開かれています。2018年度の移住相談は、なんと41,518件!セミナー開催は、539回を達成したそうです。

私も、浜松への移住を検討していた2016年冬に回帰センターを訪れて以来、情報交換などでお世話になっています。今回は、移住でフリーランスという働き方を実現している1人として、ゲスト参加させていただきました。

セミナーのテーマは、「とりあえず行ってみる、やれることをやってみるそれでいいのだ」。はい、まさに私の移住もそんな感じでした(笑)。副業や起業など、さまざまな働き方をしている行政や民間の面々もオブザーバーに加わり、移住で実現できる働き方・くらし方について語り合いました。


17:30~ セミナーの概要とオブザーバーの紹介

まず、回帰センターの静岡県専属移住相談員である宮嶋さんより、静岡県で実現できる働き方についてレクチャーがありました。

参加者の手元には、6種類の働き方が書かれた紙が。各自で、興味のある働き方に〇をつけてもらいます。「地方でこんな働き方ができるんだ!」と、移住のポテンシャルが上がったかもしれません。

しかし、いざ移住というと大きな決断になります。そんなとき、気軽に現地に行ってみることができたら嬉しいですね。静岡県内には、リーズナブルに移住体験ができるゲストハウスが続々とオープンしているそうです。以下を中心に、施設の紹介がありました。

・牧之原市移住体験施設「HAZ cottage

・伊豆松崎いなか暮らし応援施設「Guest House ITOKAWA

・東伊豆町稲取「ダイロクキッチン


浜松市には、こんなゲストハウスがありますよ。(※移住体験メニューはありません)

・アウトドアの街、浜松のゲストハウス「365BASE OUTDORE HOSTEL


オブザーバー紹介|各地の移住サポーター

つぎに、セミナー中の交流を促進してくれる4名のオブザーバーの紹介がありました。写真左の伊藤さんから、1人ずつ紹介します。

・伊藤聡昭(いとうとしあき)さん

牧之原市出身、大学への進学で東京へ移り、そのまま就職。25歳で牧之原市へUターン。東京で映像の仕事を請け負っていたことから、牧之原市への移住を促進するPR映像の作成を担当。まちづくりに関わる仕事をしている。2018年、移住が体験できる宿泊施設「HAZ cottage(ハズコテージ)」をオープン。


・森怜也(もりりょうや)さん

長崎県出身、大学進学で福岡県へ。その後の就職と転勤で、大阪・東京・静岡へと移り住む。結婚をきっかけに牧之原市に移住、市の職員へ転職する。現在、市の移住担当として希望者へのきめ細かいサポートを行う。「サーフィン(海)で有名な牧之原市ですが、お茶畑の広がる山とも近い。のんびり暮らしたい人にオススメ」とコメント。


・池田亮太(いけだりょうた)さん

神奈川県出身、進学や就職も同県内。前職の退職をきっかけに、3年間かけて全国をバイクで旅しながら移住先をさがす。バイクツーリングに適した気候に惹かれ、地域おこし協力隊として伊豆市河津町へ移住。活動も3年目となり、ライダーが集うゲストハウスを開く夢をみつけて準備中。協力隊の任期が満了する2019年春の開業に向けて、古民家の整備をしている。


・伊東直記(いとうなおき)さん

静岡市出身、看護師として長年医療機関で勤務をしたのち、里の豊かさがあふれる松崎町へ移住。現地の移住コーディネーターとして、相談の受け付けや体験ツアーの主催、ゲストハウスの運営をしています。ゲストの島川誠さんとは、移住の相談を受けて以来のパートナー。合同会社さとづくり総合研究所(本社:松崎町)代表社員。


ほかにも、SHIZUOKAシェアハウスやCOTERRACEを運営する株式会社CSA不動産(本社:静岡市)より、地域の活性化にはげむ渡辺さん(神奈川県から静岡市用宗に移住)。静岡U・Iターン就職サポートセンター(東京都品川区)で、キャリアコンサルタントとして静岡県での就職についてサポートを行う井上さん。2018年度に移住定住推進室がオープンしたばかりの富士市(ポータルサイトはこちら)や、静岡県からも計3名の職員が参加しました。


18:00~ ゲストスピーチ|移住者2名の体験談

ここからは、「とりあえず行ってみた」から実際に移住を果たしたゲスト2名によるスピーチの時間。宮嶋さんの質問を受けて、移住の経緯や現在の働き方などをリアルに語りました。


ゲスト1人目:島川誠(しまかわまこと)さん

東京都中野区で生まれ育つ。人の温かさに惹かれて、2018年夏に松崎町へ移住。かつて行われていた人力車による観光案内を復活させる。

ーなぜ松崎町に行こうと思ったんですか?

「20年間務めた会社を退職したのをきっかけに、回帰センターの移住セミナーに参加しました。そのときもらったパンフレットで見た松崎町がとてもよくて、旅行をしてみることに。人口6,300人ほどで電車も走っていないのどかな町。降り立った瞬間に、ここに住みたい!と思ったんです。2か月後には住民票を移していました。まさか、こんな移住生活になるとも思っていなかったです(笑)」


仕事は決まっていませんでしたが、直感を信じて松崎町に来てしまった方がいいと判断したそう。家は、現地の不動産屋さんに紹介してもらったところに「とりあえず」引っ越し。3LDK、庭付き倉庫付き駐車場ありの一軒家とのこと。家の前にきれいな川が流れ、桜並木のふもとという好立地だそう。


ーどのような経緯で人力車のお仕事をすることになったのですか?

「移住して2ヶ月間は、町の集まりに毎日のように顔を出しました。松崎町と地域の人の温かさに触れる中で、それを紹介する仕事がないかと伊東さんに相談したところ、教えてもらったのが人力車。使われていない車が、7年間も飾られていたんです。町の職員に状況を聞きにいくと、使っていいよと言ってもらえたので(笑)」


「移住していきなり何かを頑張っても仕方ないですし、今も頑張っている訳ではないですね。家探しも人力車の仕事も、『なんだかこうなっている』状態と言いますか。これが完成形でもありません。

ただ、働き方とは何なのか?と考えると、面白いことをやりたいし、嫌な仕事はしたくないと思っています。そのための移住でもあるので、生活費がなくならない限りは、楽しくやろうと決めています」


ー人力車の仕事はどうですか?

「"楽しい"しかないですね(笑)周遊時間は30分に設定していますが、楽しいのでたぶん伸びますと先にお客さんに言っています」


ー島川さんの人力車に乗っていると、町の人からたくさん声をかけられますよね。(宮嶋さんが人力車に)乗せてもらったときに、住民の方が声をかけてきてミカンをくれました。

「松崎町のことを大好きな人が多いんですよね。(人力車の記事が新聞に載った件について)町が取り上げられたことが、みなさんの喜びなんだと感じています。人力車のやりがいが増しました」


ー「東京にいるときよりも、人と会話をすることが多くなった」と、言っていたのが印象的です。

「ここまで来られたのは、"会話"のお陰です。田舎はとくに人のつながりが濃く、困っている人を助けてくれる松崎のみなさんの気質に救われてきました。『痩せちゃうからこれ食べなさい』と、ごはんをもらうこともよくあります(笑)。好きな時にタイムカードを押して帰れる仕事もあって、そうした仕事は人のつながりで増えてきました」


ー今後はどうしていきたいですか?

「松崎町で何かをしたいという仲間が集まりはじめています。みんなでできる仕事、季節ごとの仕事などを多面的につくっていきたいですね」


ー参加者のみなさんへメッセージをお願いします。

「ひとりひとりの状況が異なるので、一概には言ませんが…移住を考えているのであれば、それはしたいことなのだろうと思います。最悪の場合にどうなったら将来の心配をしなければならないかというリミットを決めて、ちょっとの勇気を出して行ってみるといいと思います。現地で親身になってくれる人は、きっといますので」

「伊東さんのように、移住後について考えてくれる人がいたことも大きかった」と言う島川さん。

それを受けて伊東さんは、「移住は、人生の大きな分岐点になるようなイベント。田舎は都会とまったく違う環境でもある。どのような気持ちで移住をしたいのか、何を大切にしたいのかをよく聞くようにしています」と、コメントしました。


ゲスト2人目:菅原

オーガニック農家を訪ね歩く中で、ご縁があり千葉県から浜松市へ移住。浜松の魅力を発信するライターとして活動中。

ー移住のきっかけは?

「移住について、『夢があって』『やりたいことがあって』というような、キラキラしたイメージをよく聞きますが、私のきっかけはキャリアでの挫折でした」


ー自己紹介をお願いします。

「東京の大学に進学し、卒業後は駐車場専門の不動産会社に就職をしました。営業としてさまざまな業務を経験した後、2015年夏、かねてからの希望であった海外赴任をしました。タイにある子会社に出向して、日系企業さんの現地法人の設立サポートを執り行いました。実は、その仕事がうまくできなくて。失意の中で日本に帰国をしたんです」


「目標がなくなってしまい、どうやって生きていったらいいんだろう?と、本気で悩んでしまったんですね。そんなとき、大学ノートに思っていることを書き出してみました。すると、『スローペースなくらし』『オーガニックで、人にも地球にも優しい生き方』『仕事も生活も好きな人に囲まれていたい』といった"素朴な幸せシリーズ"が出てきまして(笑)。それらを仕事にするなら、農業かなと思いました。

国内の有機農家さんを調べて、おもしろいと思った農家さんに片っ端から連絡を取りました。全部で7か所、実際に行ってみて実地の研修をしながら移住先を探していきました」


ー浜松に来たきっかけは何でしょうか?

「オーガニックな取り組みをしているおもしろい人がいるから行ってみたら?と言われたことでした。来てみると農業も盛んでしたし、まちなかに昔ながらのしょうゆ屋さんや味噌屋さんが残っていて驚きました。

浜松は、トヨタやホンダの創業の地であるとも聞きました。商売が息づくのはなぜだろうと考えたときに、『やらまいか精神』という志のある人を応援する浜松の気質を教わりました。そんな浜松に惹かれて、その後も現地に足を運んでさまざまなサポートを受けていきました。だんだんと『移住したい』という気持ちになりましたね」


ーどうして浜松が大好きになったんですか?

「それはもう人ですね。移住したてのころは、地域を知るためのアルバイトをいろいろしたんです。休憩時間にみなさんと話すうちに、やっぱり浜松が好きという気持ちが大きくなっていきました。

そのうち、この街の魅力自体を仕事にできないか?と思うようになりました。実は、浜松市は起業を応援する街でもあるんです。信用金庫が主催する創業スクールや起業に関する市の相談窓口に行きました。

移住して半年くらい経つころに、浜松の農家さんの記事を書く仕事があるよと教えてもらいました。それがライターのはじめの一歩です。そこから、浜松のベンチャー企業さんの記事を書くようになり、企業さんからも直接お仕事をいただくようになり。フリーランスのライターになっていったという流れです」


ーライターをやろう!と、一歩を踏み出せたのはどうしてですか?

「人づてに仕事の紹介をいただいたことと『絞ったこと』かなと思います。書くカテゴリーを好きなことに絞ると、自分にしかできない仕事になっていくんだと思います。私の場合は、『浜松の農業』とか『浜松のベンチャー企業』です。ニッチですよね。浜松のおもしろい取り組みを、書きたくてしょうがないので(笑)」


ー仕事のバランスは、どのように取っていますか?

「起業家の先輩などに相談しています。浜松市は起業のサポートが充実していると思うんです。行政や金融機関がつくっている仕組みがあって、起業家の先輩方もいらっしゃるので相談しやすいです」


ー今後はどうしていきたいですか?

「私の第二の人生、ライフワークが見つかったのは浜松のお陰です。2019年は、浜松の魅力をもっとたくさんの人にお届けできるように、自分のスキルを高めていきたいです」


ー参加者のみなさんにメッセージをお願いします。

「どんな人生を生きたいか?というビジョンをしっかり逆算して、達成するための手段のひとつとして移住を検討するのがいいのかなと思います。私のように落ち込む必要はないのですが、"自分の本当の声"に耳を傾けていく中で、できることがあるのであればやってみる。それが、皆さんの幸せにつながっていくのではないかと思います。

浜松市が運営している移住促進のポータルサイト(※)にも、『やりたいことに挑戦し、自分らしい暮らしが見つかる街』と書いてあるんです。けっこう本当にそうだなって思っています。そんな浜松を、みなさんにも一度訪れてもらえたら嬉しいです」

(※)浜松市移住促進ホームページ「はじめよう、はまライフ


18:30~ ワールドカフェ方式で座談会

参加者のみなさんの可能性を広げる時間として、ワールドカフェ方式(※)の座談会が行われました。それぞれの地域でさまざまな仕事をしているオブザーバーやゲストが、全4テーブルを15分ずつまわります。

移住が具体的になっている方もそうではない方も、仕事をがんばる20代の方も幸せなセカンドライフを歩もうとしているご夫婦も。それぞれに希望や不安を持ち寄って、ざっくばらんに会話を重ねていきました。19:30からの希望者のみの個別相談にも、ほぼ全員が残るほどの盛況ぶり。各地のリアルな情報がたくさん飛び交い、終了時刻を過ぎても会話が途切れませんでした。

(※)ワールドカフェとは|アメリカで開発された会議の方式。お茶を飲みながらリラックスしたような雰囲気の中で討論を行う。参加者がテーマについて、自由に対話をすることで思考を深め、気づきを得ることを目的とする。


編集後記|

ゲストもオブザーバーも、日々を心から楽しんでいる人たちでした。まるで、移住で夢を叶えた「仲間」に出会えた気分です。各地の魅力や取り組みを知り、みなさんと交流できたことで、浜松でのライター活動への励みにもなった1日でした。あらためて、関係者のみなさまに御礼を申し上げます。

菅原 岬|浜松在住ライター

浜松在住在住ライター、菅原 岬 のページをご訪問くださり ありがとうございます。 ・不動産関連企業での新規開拓、収益管理の経験 ・タイ、バンコクでの日系企業様設立サポートの経験 を活かし、浜松企業さまの収益向上に貢献する情報発信をしています。

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