なぜ「無花果」と書くの?意外と知らないイチジクの世界をのぞいてきました

芳醇な甘味となめらかな食感で人気の高い、「イチジク」。首都圏ではあまり見かけませんが、浜松では8~9月にかけてスーパーに並ぶため、とっても身近な存在です。今では私もすっかりお気に入り……のはずが、先日、私のイチジク好きを揺るがす事件が起きました。

「イチジクって、どうして『無花果』と書くんですか?」と聞かれて答えられなかったのです。そういえば、イチジクのおいしさに甘んじてばかりで、そもそもイチジクの生り方さえ知りませんでした……そんな自分を反省し、生産者さんに畑を見せていただくことに。

今回、“三ヶ日ICから一番近いみかん園”ことあつみ農園さんを訪ね、知られざるイチジクの世界を探訪してきます!


まず、イチジクの魅力と浜松の人の“イチジク観”について

浜松では8月に入るころ、スーパーの店頭にイチジクが出回ります。食べ方はかんたん。ふっくらした実を手で開くようにそっと割り、皮は残すようにして中身をパクッといただきます。

香りは豊潤で、たとえるならば「リンゴとモモを足して2で割ったような香り」といいましょうか。なめらかな食感のなかに、つぶつぶの種が程よい歯ざわりを演出。繊細な甘味が口いっぱいに広がります。


浜松の人は言います。「まるで、宝石のような果物だ」と。


きっと需要はあるはずなのに、なぜ、首都圏ではイチジクをあまり見かけないのでしょう? それは、大きな産地が近くになく、流通量が少ないからかもしれません。イチジクは傷つきやすいうえ、収穫から数日で熟してしまうので、遠方に出荷するのが難しいのだそう。

寒さにやや弱く、水はけのよい土壌が必要といった条件から、イチジクの産地は西日本方面に集中しています。収穫量順に、和歌山県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県などが産地です(※)。

つまりは、浜松にイチジクが出回る理由も、一大産地である愛知県と隣接しているから。浜松の皆さんは、ラッキースポットで暮らしているのですね......!


※参考:農林水産業省 令和2年度特産果樹生産動態等調査 2)かんきつ類以外の果樹【落葉果樹+常緑果樹】計


イチジクはなぜ「無花果」と書くの?果物でも野菜でもない不思議な生命体

では、さっそくイチジクの畑を見せていただきましょう。ハウスの近くに立っただけでも、イチジクの芳醇な香りが漂ってきました。なかに入ると、イチジクの木に実がたわわになっています。

イチジクは木に生るのですね!しかも人の背丈よりも高い木で、驚きました。すでに2メートルには届いていそうですし、最終的には3~6メートルまで育つそうです。

1本の木から3~4本程度の幹が伸びていました。そして、幹から枝が分かれるポイントに実が生っています。低いところから高い所へと順番に実を付けていくので、いつどれくらいのイチジクが収穫できるか販売予測はしやすいとのこと。


ですが、イチジクの花が見当たりません!

なるほど、すでに結実してしまっているので花の時期は終わっているのかな、と思っていると「実は、みなさんが実だと思って食べている部分に花が含まれているんですよ」と衝撃の事実を知らされました。


「実の中に花が咲く!?」と、にわかには信じられず......JAグループ福岡さんにもお知恵を借りてみると、本当に教わった通りでした。

参考:イチジクは花がないの? | JAグループ福岡


どうやら、実のなかに詰まった赤いつぶつぶの先端あたりに花が咲くそうです。そして、実だと思って食べていたのは、花のう・果のう(かのう)と呼ばれる部分だそう。このように、見た目上は花が咲かないように見えることから、「無花果」の当て字がされたのですね。とっても驚きましたが、スッキリしました!

ちなみにイチジクは、「育てやすい植物であり、栽培面積に対する収量も悪くない」とのこと。さらにハウスで育てることで病気になりにくく、適切に管理すれば厳重な防虫環境も不要にできる可能性があるそうです。

樹齢が10~15年あり長く収穫できることや、実は200以上の品種があるので新種にチャレンジする楽しみがあるなど、生産者さんも取り組みやすい植物だそうです。

参考:https://www.jaac.or.jp/agriculture/product/ichijiku/index.html


宝石のように愛らしいイチジクをお客さんに届けたい。あつみ農園さんの想いと栽培の工夫

遅くなりましたが、今回お邪魔した三ヶ日町のあつみ農園さんを紹介します。メインで扱っているのはミカンで、ご当地ブランド「三ヶ日みかん」を中心に、糖度の高い「由良(ゆら)」などを栽培しています。

ミカンの収穫は10月ころから始まります。閑散期である夏場にも何か収穫できないかと考え、以前にチンゲンサイを栽培していたハウスでイチジクを育てはじめたそうです。

ミネラル分の豊富なサンゴの石灰をまぜた土で、甘いイチジクを作ります。水切り(土の中に雨が染み込まないようにする作業)にも余念がありません。土壌の水気をしっかり切ってあげることで、イチジクの水分も減って糖度が増すためです。

あつみ農園さんがハウスでイチジクを育てているのは、おもに個人や飲食店などへ直接販売しているから。衝撃に弱いイチジクの実を雨から守りながら大切に育て、最高の状態で出荷したいとの考えです。収穫は、朝の6:00から。完熟の実を一番みずみずしいときに収穫し、そのまま近隣の個人や飲食店に販売しています。


手間ひまかけたあつみ農園のイチジクの味は評判になり、お店で仕入れて販売しているパン屋さんがあったり、完熟のためジャムにしたいと買っていく方がいたり。たくさんの方に喜ばれ、お客さんは口コミで増えていきました。浜北や三河方面からも、わざわざ足を運ぶ方がいるそうです。

畑から戻ると、あつみ農園さんがこの日の朝どれを冷蔵庫で冷やしてくださっていました!洗ったときの水で皮が濡れて、本当に宝石のように輝いています。

お味も格別で、「こんなに甘いイチジク、食べたことない!」と同行者から歓声が上がるほど。私も完熟のイチジクをはじめていただきましたが、絶品でした。これは、お客さんが直接買いにくるのも納得です。

まさに、想いのこもったよいモノづくりが評価され、ファンが増えている好例ですね。今年は9月末にシーズンを終えましたが、来年の収穫が楽しみです。


あつみ農園さんでは、三ヶ日みかんや由良、イチジクの直販を行っています(販売数量は収穫時期により変動します)。ご興味のある方は、下記のホームページをご覧ください。


あつみ農園さんの概要

所在地:静岡県浜松市北区三ヶ日町大谷1131-3
HP:https://atsumifarm.jp/


菅原 岬|浜松在住ライター

浜松在住在住ライター、菅原 岬 のページをご訪問くださり ありがとうございます。 ・不動産関連企業での新規開拓、収益管理の経験 ・タイ、バンコクでの日系企業様設立サポートの経験 を活かし、浜松企業さまの収益向上に貢献する情報発信をしています。

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