令和2年度の浜松市実証実験サポート事業が公募中、7月30日(木)まで

画像:浜松市実証実験サポート事業HPより引用


2020年6月29日(月)、令和2年度の浜松市実証実験サポート事業(※)の公募開始にあわせた公募説明会がオンラインで開催されました。浜松市実証実験サポート事業は、昨年度にスタートしたプロジェクト。スタートアップ企業からの提案を公募し、浜松市の社会的課題の解決とテクノロジー活用による産業振興を推進することを目的としています。


さまざまな自然環境を抱える浜松市を舞台に、各種のサポートを得ながら、1年間にわたり実証実験を展開できるというもの。本年度は、浜松市の各部門から提示されたテーマに合致する取り組み、および、ポストコロナの新生活様式に対応するための取り組み(フリー提案)が募集されています。


基調講演を皮切りに、本事業の説明や昨年度の採択企業によるパネルディスカッションが行われ、充実の1時間となりました。その中から、基調講演一部と浜松市職員様による事業内容説明についてお伝えします。


(※)実証実験とは|新開発の製品・技術などを、実際の場面で使用し、実用化に向けての問題点を検証すること(引用:goo国語辞典)



アジェンダ

1.ウィズコロナ時代の街づくり(10分)

 株式会社日本総合研究所 プリンシパル 東 博暢 氏

2.事業内容説明(10分)

 浜松市担当者

3.個別課題紹介(15分)

 浜松市担当者

4.パネルディスカッション(15分) 昨年度採択されている事業

 株式会社ムジカル 代表取締役 大山 幹也氏

 株式会社FromTo 代表取締役 宮城 浩 氏

 トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 経営企画マネージャー 佐田 雅弥 氏

 株式会社日本総合研究所 プリンシパル 東 博暢 氏(モデレーター)

5.質疑応答(5分)



1.ウィズコロナ時代の街づくり

画像:「ウィズコロナ時代の街づくり」スライドより引用


浜松市フェロー兼ベンチャー支援アドバイザーも務める東氏より、「ウィズ/ポストコロナ社会におけるまちづくり」をテーマに本事業の開催意義について説明がありました。


コロナ以降の都市の在り方として、「デュアルモード・ソサエティ」という概念があるそうです。デュアル(dual)とは、2者のこと。つまり、経済モードと安全モードをうまく切り替えられる街づくりが求められているとの観測です。


今、都市経営・街づくりにもイノベーションが求められています。そのためには、革新的なテクノロジーやアイデアを実際に試し、住民が恩恵を受けられる形にしていく必要があるでしょう。

そこに、浜松市が実証実験を誘致する意義があります。浜松市で暮らす人々に、経済的にも精神的にもいかに豊かになってもらえるか。そのための技術やアイデアを広くスタートアップから募り、市内に実装していくという壮大な実験なのだそうです。


浜松市では以前から、以下3つの取り組みを進めてきました。


①街のデジタル化

2019年10月には、「デジタルファースト宣言」を発表。DX(デジタルトランスフォーメーション)予算も確保し、デジタルの力で浜松市に暮らす人々の生活を豊かにしていくチャレンジを行っています。


②スタートアップ支援

2017年には「浜松バレー構想」をまとめあげ、官民金学がそれぞれにベンチャー・スタートアップを生み出すプロジェクトを立ち上げてきました。市外からのベンチャー誘致にも力を入れています。


③文化の醸成

市内外で人の往来や企業間の交流を活発にし、オープンイノベーションを促してきました。「Withコロナ」「ポストコロナ」と呼ばれるこれからの時代において、デジタルの恩恵を享受しようと市民全員が意欲的になれるような文化作りにもチャレンジしています。


そのような中で、本事業に見られる官民連携の在り方は、東氏が「官民連携3.0」と位置付ける最先端の形だそうです。スタートアップをはじめとするさまざまプレーヤーと自治体が連携しながら、アジャイルに現地でソリューションを開発していく。いわば、街丸ごとが、ポストコロナ産業のインキュベーターになる可能性を秘めています。


このように、「官民連携3.0」はこれまでとまったく違った官民連携のパラダイムですが、海外ではすでに取り組みを始めている都市もあります。国内でも、トヨタが静岡県裾野市で開発する「コネクテッド・シティ」のニュースが話題になりました。


街の課題を解決し、暮らす人々をより幸せにしていく“新たな何か”が求められています。「あったらいいね」ではなく、「なくてはならない」サービスをどう作っていけるのか。本年度は、さまざまなテーマに関するアイデアを募集していくとのことです。



2.事業内容説明

画像:「事業内容説明」スライドより引用


続けて、浜松市産業振興課の宮崎氏より、本事業の詳しい説明がありました。

浜松市は、静岡県の西端にある自治体、政令指定都市です。日本で2番目に広い総面積と、約80万人もの人口を抱えています。自動車やオートバイ、楽器をはじめとする「ものづくりの街」として発展。世界の名だたるグローバル企業も成長してきました。


画像:「事業内容説明」スライドより引用


そんな浜松市には、「国土縮図型の都市」という一面も。海・山・川・湖と都市部が共存しています。4,000を超える製造業と全国トップクラスを誇る農業生産に支えられた、バランスの取れた産業構造を有します。「やらまいか(やってみよう)精神」が息づき、健康寿命や幸福度も高い水準にあります。また、大手企業とスタートアップが組み、さまざまな実証実験行ってもきました。


また、浜松市では、2017年に日本一の起業家応援都市宣言を掲げ、「浜松バレー構想」に取り組んできました。いわば、シリコンバレーの浜松版。スタートアップが浜松市に集まり、育っていくというエコシステムを作る取り組みです。そのシステムの中で、既存の企業とスタートアップがコラボレーションすることにより、市内の産業にイノベーションを起こしていくことを狙いとしています。

画像:「事業内容説明」スライドより引用


本事業でも、全国から募る実証実験のサポートを通じ、浜松市の産業振興に繋げて行く考え。市民生活の質の向上をスタートアップとともに実現していくプロジェクトになっています。


具体的な支援内容は、以下の6つ。


✔ 最大200万円の経費支援

✔ 実証実験フィールドのあっせん

✔ 実証実験モニター募集支援

✔ 実証実験に係る各種調査

✔ 実証実験のPR支援

✔ 法制度に関するアドバイス


まさに、実証実験のスタートから実施までを浜松市が伴走してくれる格好となっています。


◆令和2年度、浜松市実証実験サポート事業の応募テーマ一覧


ポストコロナにおける新しい生活様式に適応することが求められる今、応募テーマも昨年度より具体的になりました。

画像:「事業内容説明」スライドより引用


1.子宮頸がん検診の受診率向上

現状、20%ほどに留まっている子宮頸がん検診の受診率を、50%以上に引き上げたい。子宮頸がんは、早期に発見できれば治療が比較的難しくないがんだそうです。逆に発見が遅れれてしまうと、子宮摘出といった重症になってしまう可能性があります。

浜松市としては、20代のうちから受けてもらいたい検査であるとのこと。無料クーポンを配るなどしていますが、よりレバレッジの効いた施策を実施したい。


2.「健幸」度を測り、高められるアプリの開発

市民の「健幸」度、つまり、健康度や幸福度をさらに高めるためのテーマ。個人のウェルネス度合いや幸福度合を定期的に測り、向上させることができるアプリを開発したい。1位に選ばれた20政令指定都市「幸福度」ランキング(2018年)は、外部のメディアによる格付けでした。内発的なサービスを作っていきたいとのこと。


3.デジタルを活用したマイクロツーリズム推進

インバウンドや遠方からの誘致を目指すのではなく、まずは、近場からの小人数旅行を呼び込む「マイクロツーリズム」を推進したい。コロナの状況を鑑みた戦略です。

浜松市は自然が豊かであるだけでなく、産業観光というツールも有しています。徳川家康が若いころを過ごしたという歴史的な価値もある都市です。市内や静岡県内の人たちから浜松を満喫してもらうことで、全国的に冷え込んでしまっている観光産業を復興していきたいとのこと。


4.VRなどで被災家屋調査スキルを習得

罹災証明の発行をいち早く進めるため、防被災家屋の調査スキルを習得したい。例えば、大規模な地震が発生したとき、さまざまな家屋を見て回り、被災状況をチェックするそうです。その上で、罹災証明の発行とサポートをしていくので、時間がかかってしまう作業です。VRを用いたシミュレーション教育などで、被災家屋の調査スキルを高めていきたいとのこと。


5.地中に埋められた水道管の老朽度合いや腐食度合いの検知

老朽化したり腐食したりしている水道管の検知は、現状、浜松市の職員による手作業だそうです。音聴棒と呼ばれる特殊な棒を道路に当てて反響音を聞き、水漏れがないかを確認しています。水道管の素材によっては、音を聞き取るのがとても難しいとのこと。この作業を効率化したり、検知結果をわかりやすくする先進技術を募集しています。


6.ビニール製水道管の漏水箇所のスムーズな特定

上記5と関連したテーマです。ビニール製の水道管に特化して、水漏れが発生している箇所を確実に特定する技術を募集したい。ビニール製の水道管は、音聴棒から聴こえる反響音が小さく、聴こえづらいそうです。浜松市に敷設されている水道管の約50%以上は、金属製だそうです。しかしながら、地域によってはビニール製が敷かれているところもまだ多くあります。


7.先進技術を活用した交通空白地域の解消

市内のどこに住んでいる人でも困ることのない交通網を実現したい。浜松市は、日本で2番目に広い行政区です。その広さもあって、とくに中山間地域では、駅やバス停が遠くて公共交通機関が使いづらくなっています。現状でも、地域の郵送(有償・無償)を担っているNPO法人がありますので、既存の団体と連携しながら交通空白地域の輸送サービス強化していたいとのこと。

8.体験型のバーチャル動物園の実現

コロナをはじめとする天災の理由により、動物園に行きたくても行けない子どもたちにも、動物と触れ合う体験を提供したい。西区舘山寺町に位置する浜松市動物園には、国内ではここでしか見られないゴールデンライオンタマリンという動物をはじめ、たくさんの動物を飼育しています。同施設では、命の教育にも力を入れており、その延長としても体験型のバーチャル動物園を実現したいとのこと。


9.最新技術による「移動博物館」の充実

中区蜆塚町にある浜松市博物館では、移動博物館を実施しています。博物館の展示物を地域の学校にまで持って行き、展示や職員による授業を行っています。展示品の中には、外に持ち出せない資料もあるのが課題となっていました。3Dプリンターでサンプルを制作したり、オンラインで展示や授業をできたりといった、バーチャル施策を期待しています。


10.火災発生箇所及び原因の速やかな特定

市内で火災が起きた際、消防職員が火災の原因や出火箇所をひとつひとつ調べているそうです。調査方法は、近隣の方の証言や消火活動中の様子から、ベテランの消防職員が判定することが多いとのこと。令和元年度でも178件の火災がありました。燃え方の画像認識や調査資料を分かりやすくするなどの施策を通じ、もっと速やかで確実に火災原因を特定したい。


11.最新技術で消防隊員のスキル・体力を向上

消防隊員のスキル向上に向け、VRやモーションキャプチャなどの最新技術により、 熟練者の技術を若手に確実に伝達していきたい。また、消火活動や救急活動において必要とされる体力作りにも活用したいとのこと。平成30年度の時点で、浜松市の消防職員は900人弱になるそうです。火災がないときも、事務処理業務や実際の現場を想定したさまざまな訓練による技能向上に取り組んでいます。


12.活動中の各消防隊員の状況把握

先進技術を活用し、火災現場において適切な指揮のもと、各消防隊員が安心して普段の訓練の成果を発揮できるような体制を整えることで、本市の消防力の強化を図りたい。火災現場は非常に危険です。各消防隊員の行動状況を指揮者が把握して指示できるようにすることで、早期の鎮火や隊員のリスク回避に活用したいとのこと。


13.ポストコロナ社会を見据えた新生活様式への対応(フリー提案)

ポストコロナ社会を見据え、新しい生活様式に対応するため、浜松市の課題を特定してその解決に向けた実証実験プランを募集します。課題の特定にはじまり、ソリューションプランも提案してもらいます。スタートアップのアイデア幅広くを募集するフリーテーマとなっています。


◆事業のスケジュール

プロジェクト募集開始:6月29日(月)

公募締め切り:7月30日(木)18:00 ※7月31日(金)ではありません。

事前相談会:7月22日(水) ※7月15日(水)までに事業プランを提出した企業が対象


一次審査(書類選考)結果通知:8月21日(金)

二次審査会(プレゼンテーション):9月16日(水)

最終結果通知:9月25日(金、予定)


プロジェクト支援開始:10月1日(木)

以降、令和3年9月まで約1年間にわたってサポートを実施。


◆応募方法

専用サイトに掲載の募集案内を確認の上、エントリーシート2種類(事業概要・実証実験)を作成。応募フォーム(専用サイトにリンク有)に必要事項を記載し、エントリーシートを添付の上、応募。※PCからのアクセス必須。


◆関連動画

2020年6月29日(月)開催、浜松市実証実験サポート事業オンライン説明会

Youtubeのリンクに飛びます。


◆本事業に関する問い合わせ先

浜松市役所産業部産業振興課

電話番号:053-457-2044 ファクス番号:053-457-2283

問い合わせフォーム

菅原 岬|浜松在住ライター

浜松在住在住ライター、菅原 岬 のページをご訪問くださり ありがとうございます。 ・不動産関連企業での新規開拓、収益管理の経験 ・タイ、バンコクでの日系企業様設立サポートの経験 を活かし、浜松企業さまの収益向上に貢献する情報発信をしています。

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